皆さん、夜は充分に眠れているでしょうか?
人は加齢に伴い睡眠が浅くなったり、途中で目が覚めたりしやすくなるため、 睡眠の質が低下することがあります。
寝不足が続くと、昼間の生活に影響を及ぼし、疲れやすくもなります。 そんな時、睡眠薬は大きな助けになりますが、同時に「睡眠薬を使うと認知症に なるのでは?」と不安を感じる人も多くいるようです。
今回は、そんな疑問に対して最新の研究をもとにお答えいたします。
確かに、2012年にフランスの研究チームが「ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用し ている人は、服用していない人に比べて1.5倍認知症になりやすかった」という論 文を発表しました。
これが当時、センセーショナルに報道されたため「睡眠薬をのむと認知症になり やすい」と記憶している人が多いのだと思います。
しかし実は、「差がなかった」という論文も数多く発表されています。
睡眠薬の種類や使われ方、データの集め方によって結果が異なるというのが事実 であり、「睡眠薬が認知症を引き起こす」というのは誤った認識です。
さて、それではタイトルにもあるようにどんな場合に病院受診をするべきでしょうか? ふくらはぎが一晩で1、2回つる場合は病的な異常はほとんどないこと多いです。 しかし日中も夜間も関係なく何度もつる、ふくらはぎに限らず複数部位がつってしまう、つった 状態から3時間以上回復しないなどの場合は病気が隠れているかもしれません。
これらの状況があれば医療機関を受診しましょう。 どんな病気が考えられるかを見てみましょう。
近年では不眠症自体が認知症のリスクを高めていると考えられている。
私達は睡眠中、脳内の有害な廃棄物、たとえばアミロイドβタンパク質 (アルツハイマー病の原因と考えられている) を排出しています。
不眠によってこの洗浄作用が十分に行われないと、異常なタンパク質が脳内に蓄積し、認知症のリスクを高めることにつながります。
また、不眠症になると、睡眠中に行われるはずの神経細胞の修復ができなくなったり、脳内のストレスホルモンが増加したりもします。
それらが脳の構造や機能に悪影響をおよぼし、認知症のリスクを高めている可能性もあるわけです。 つまり、不眠症を「年のせいだから」と放置せずに、質の良い睡眠を取れるようにしていくことが大切です。
睡眠薬としては、従来はベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬が多く使用されてきました。しかし、最近ではメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬と呼ばれる新しいタイプの睡眠薬が使われます
そしてこの新しいタイプの睡眠薬には認知症予防の効果があるかもしれません。
2023年にアメリカで行われた研究によると、オレキシン受容体拮抗薬を服用した人はアミロイドβタンパク質の量が減少したとの報告があり、認知症予防の観点から注目されています。
睡眠薬には様々な種類があり、それぞれに適した使い方があります。睡眠薬の使用に関しては、自己判断で始めたり止めたりするのではなく、必ず医師の指導のもとで行うことが大切です。
また、睡眠衛生の改善や認知行動療法などを併用すれば、より健康的な睡眠を得ることができるようにもなります。
睡眠は私たちの健康にとって非常に重要です。睡眠に対する不安を感じたら、遠慮なく医師に相談し、最適な解決策を一緒に考えてもらいましょう。良い睡眠が毎日を元気に過ごすための第一歩です。
コラムの執筆者
理事⻑ 金井重人
・資格
日本精神神経学会専門医/医学 博士/認知症サポート医
・専門分野
精神医学全般/うつ病/認知症