足がつる経験は多くの人があると思います。
つる時は突然でびっくりしますし、何より痛いですよね。
こんなに痛いのだから悪い病気なんじゃないかと感じるくらいです。
ここで言う「つる」とは筋肉が突然強い収縮をし、すぐに改善せず収縮し続けるため痛みが強い状態のことです。
「こむら返り」とも呼ばれますが、「こむら」とはふくらはぎの意味があります。
ある報告では成人の60%以上に夜間足がつる経験をしており高齢になる方がよりなりやすいと言われます。1) ではなぜつるのでしょうか?なぜ夜間就寝中に多いのでしょうか?
脱水、冷え、妊娠、筋肉の疲労、運動不足による筋力低下や柔軟性の低下、ナトリウムやカリウ ムやマグネシウムなどの電解質不足などが日常的につりやすくなる背景としてあります。 つる部位としてはふくらはぎが最も多いとされますが、筋肉がある部位はどこでもつる可能性が あります。 若い人で運動量が多く筋肉の疲労が強い場合や電解質の消費が多かった場合は時間帯を問わずつ ることがあります。 高齢者は若い人と要因が異なる関係で夜間につる方が増える傾向になります。
筋肉は収縮(縮む)するためのセンサーと弛緩(伸びる)するためのセンサーでバランスをとりなが ら調節されています。 我々は普段、それらを巧みに調節することで筋肉を動かしています。そしてそのバランスが崩れ ることに前述の背景が加わることで足がつるという現象が起きます。
さて、それではタイトルにもあるようにどんな場合に病院受診をするべきでしょうか? ふくらはぎが一晩で1、2回つる場合は病的な異常はほとんどないこと多いです。 しかし日中も夜間も関係なく何度もつる、ふくらはぎに限らず複数部位がつってしまう、つった 状態から3時間以上回復しないなどの場合は病気が隠れているかもしれません。
これらの状況があれば医療機関を受診しましょう。 どんな病気が考えられるかを見てみましょう。
・心臓疾患や手足の血管病・慢性腎不全・慢性肝障害やアルコール性肝障害・アルコール依存症 ・糖尿病・甲状腺機能異常・腰部脊柱管狭窄症・熱中症 ・薬剤性(血圧やコレステロールを下げる薬、利尿剤、神経に作用する薬、女性ホルモン薬など)
つった場合の対処や治療ですが、強く収縮した筋肉を伸ばす方法があります。
例えば、ふくらはぎがつった場合はつま先を体の中心に近づけるようにする。
するとアキレス腱が伸びふくらはぎの筋肉も伸ばされることになります。 数分続けるといいでしょう。
次に下半身を温めることです。 夜間は体温が下がっている上、夏ならエアコンで冷えたり冬は気温で冷えたりと冷えで出現しやすくなることも多いです。 薬による治療ですと日本では漢方の芍薬甘草湯が使用されることが多いです。
筆者の経験的には処方した半数以上の方が効果があったと答えます。 実際にいくつかの研究でも効果が確認されています。3)4)
まだ暑い日が続いています。涼しい秋、食欲の秋が楽しみですね。
体がつってしまい困っている方はぜひ東条病院やかかりつけの医療機関で相談
してみてくださいね。
コラムの執筆者
院長/介護医療院管理者
山内 雅史
・資格
日本内科学会認定医
日本東洋医学会認定漢方専門医
日本プライマリ・ケア連合学会
認定家庭医療専門医
・専門分野
総合診療科
参考文献
1.Allen RE, Kirby KA. Nocturnal leg cramps. Am Fam Physician. 2012 Aug 15;86(4):350-5.
2.Symptoms, Night leg cramps, Mayo Clinic
3.三浦義孝: 日本東洋医学雑誌, 49(5), 865-869, 1999
4.Kobe J. Med. Sci., Vol. 61, No. 5, pp. E132-E137, 2015